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小説
【新作落語……のようなもの……】
接待ゴルフ
太郎吉野 

1956年神戸市生まれ。日本大学卒後、東京で某作家の(無能な)秘書としての会社員生活の後、1988年、神戸市に書店「チャンネルハウス」を開業も、経営の才無く12年で幕(涙)。しかしなお「本屋」への未練断ち難く、2000年7月、無謀にも再び神戸・元町に「烏書房」を開店。「金」にたたかれ「金」に泣く日々を(性懲りもなく)続けるビンボ人。ああ、お金が欲しい。


突如思いついた「新作落語」。
デキの方は……う〜〜ん……どうでしょうか……?


 あー、山田くん。

 へえ、なんでっしゃろか、中田課長。

 君な、確か学生時代はゴルフ部やったな?

 へぇ、そうでおま。グリーンの貴公子、て呼ばれてましたがな。もう、女の子にキャーキャー騒がれて、えらいこってすわ。

 ほうかぁ、グリーンの貴公子のぉ……女の子がキャーキャー……ほな、あの嫁はんも、そのとき山から連れて来たんか?

 そうでんねわ。箕面のゴルフ場の隣の猿山から……て、課長!何言わしまんね!

 あ、いやいや、猿の嫁はんはどうでもえーんやけどな、君も、知ってるやろ。ほら、田中社長。

 どうでもようない!課長、人の嫁はん、猿にしといて、どーでもようはおまへんがな!……あ、田中社長たら、あの、お得意先の?

 言いだしたんは君やがな。あ、そうや、あの田中社長。

 あの、うちの一番のお得意先の?

 そうそう。

 あの、社員にはめちゃ厳しいけど、家に帰ったら、嫁さんに頭が上がらん、朝、ゴミ出し忘れたら、その嫁さんから折檻される、いうあの田中社長でっか?

 ……あ、まあ、そうらしいの。婿養子らしいからの。

 こないだ、「いや〜〜、最近はめっきり白髪が増えて」て言うんで、わてが「ほう、社長、かつらもやっぱり歳にあわせて白髪にしまんねな。」言うたら、タコみたいに真っ赤になってた、あの田中社長?

 あ……君、そんなこと言うたんか!あかんで、それ!みんな知ってるけど、口にせんので!!

 わて、正直モンだっさかい。

 しゃーないなあ……もう……いや、その田中社長をな……

 へえへ、あのタコを?

 君、やめときぃて。そのタコを……いや、田中社長をな、今度の日曜にゴルフで接待するんやが……

 ほう、ほう。タコがゴルフでっか。やっぱり、得意は8番でっかいな?

 君、えーかげんにしとかんと、そのうちケガするで。

 はははー、だ。田中社長のことでっさかい、こらもう、ケガのうてよかったね、ちゅーとこでんな。
 
 うまいこと、言いやるな。……て、そうやない……えーと、なんの話やったかいな?

 ゴルフでんがな。課長、疲れてんのとちゃいまっか?

 君が疲れさすんや、君が。そうや、そのゴルフにな、うちからは、わしと部長に、営業の、ほれ、森くんが行くはずやったんやが……

 あれ?森くん言うたら、あの……

 ほうなんや。君も知ってのとおり、入院してしまいよったんやがな……

 ああ、そうだしたな。強欲でけちですけべで根性悪い奴だしたけど、まだ若いのに……まだまだこれからだしたのになあ……

 おい、死んでない、死んでない。盲腸で入院しただけや。それに君、全然ほめてないがな……

 いやいや、課長、今日び、わかりまへんで。本人には盲腸やとしか知らされてないけど、実は癌やったりして……ぐふっ、ぐふふふ……

 君、期待しとるんかいな。目が笑うてないで。怖いわ、わしゃ。

 いやね、わて、あいつに千円借りとりまんねわ。このままぽっくりいってくれたら、あれ返さんでも……ぐふっ……

 殺すな。千円で人、殺すな!君と話してたら、全然話が前に進まん……いやな、その接待ゴルフやけどな……

 へえへ、あのタコの接待……

 やめぇて、タコはやめぇ。そのゴルフにやな、森くんの代りに行ってほしいんやがな。

 へ?わてがでっか?

 そうや。学生時代ゴルフ部やったちゅう君を見込んでやな、頼んでんねやないか。

 う〜〜〜〜ん……ゴルフでっか……あの、堅い球、かき〜〜ん、て飛ばす、あのゴルフですわな?う〜〜〜ん……どないでしょうか?

 ほうや……そのゴルフ……やけど、君、日曜はなんか都合悪いんか?

 いや、別に都合は悪うおまへんのやが……わて、そのゴルフはやったことおまへんねわ。

 君、学生時代にやっとったんやろ?履歴書のあれは、ウソか?

 いや、確かにゴルフ部やったんですけどな。わてのんは、軟式ゴルフやったんですわ。

 (ご退屈さま……テケテンテケテン……)




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