チョキチョキペタペタ。 チョキチョキペタペタ。 街はずれの森にある小さな小さなお家から大変リズミカルな音が聞こえてきます。 チョキチョキペタペタ。 チョキチョキペタペタ。 かばん屋さんの姉妹、デルフィンヌとソランジュがお家でカバンをこしらえている音でした。 お姉さんのデルフィンヌはハサミ係、妹さんのソランジュはのり係。 二人は協力して一日一つ、素敵なカバンをこしらえます。 チョキチョキペタペタ。 チョキチョキペタペタ。 カバンが七つ作れたら、街の広場で週に一度開かれる蚤の市に店を出します。 二人のカバンはなかなかの人気ですぐに売れてしまいます。 そして、売れたお金で挽き肉と野菜と小麦粉を買い、お家に帰ってギョウザを作るのでした。 妹ソランジュはギョウザ作りの名人で、ジュージュー焼く音は森の狩人や木こりたちを集めます。 彼らは焼きたてのギョウザと交換に、カバンの材料となる皮や木などを置いてってくれます。 それで二人はまた新しいカバンを作ることができるのです。 チョキチョキペタペタ。 チョキチョキペタペタ。 チョッキンチョッキンペタペタペッタリ。 今月最後の蚤の市の日、いつもどおり二人は七つのカバンを売り切り、ギョウザの材料を買いに行くところでした。 そこへ突然、一人の男が立ちふさがります。 手には破れたカバンと割れたツボを持っていました。 「やい、この前おまえらのとこで買ったカバン、ツボを入れたら破れてしまったぞ！ そのせいでツボも地面に落ちてガチャンだ！ どうしてくれるんだ！」 ツボは明らかにカバンに入るような大きさではありません。 おそらく無理に入れようとしてカバンが破けてしまったのでしょう。 「どうしよう、わたしののりづけが悪かったのかも・・・」 ソランジュはオロオロします。 それをデルフィンヌがかばいます。 「入れ物に入れ物を入れるなんて意味ないじゃない！」 確かにカバンもツボも入れ物です。 男は一瞬たじろぎました。けれども引きさがりません。 「なにを入れようと俺の勝手だー。しっかりのりづけしてないから悪いんじゃないかー」 結局二人は割れたツボ代として、今日の売上金を全部巻き上げられてしまいました。 ギョウザの材料も買うことができず、森のお家にトボトボ帰りました。 「ああ、わたしののりづけが悪かったんだわ・・・」 お家に戻ってからもソランジュは落ち込んで、とうとう寝込んでしまいました。 話を聞いた狩人や木こりたちは、気を使ってか、ギョウザなしでもカバンの材料を置いてってくれて、しかも街にギョウザの材料を買いに行ってくれました。 けれども、それで困ったのはデルフィンヌです。 材料が目の前にあるけど、ギョウザなんて作ったことがありません。 いつもソランジュがしていることを思い出しながらやってみましたが、なかなかギョウザの形にならず、皮が焦げ付いたり破れたりして、しまいにはフライパンから緑色の煙がモクモク出て、びっくりした狩人や木こりたちは一目散に逃げていきました。 ぐちゃぐちゃのギョウザのようなものの前でデルフィンヌはため息をつきました。 「困ったなあ・・・」 それから三日後、ソランジュの看病をしながら、デルフィンヌは一心不乱にギョウザ作りに打ち込みました。 おかげでどうにかギョウザの形は作れるようになりましたが問題は皮の留め方です。 ソランジュほどのりづけがうまくないためか、焼くとどうしても皮の留め口が開いて中身がこぼれてしまうのです。 留め方をなんとかできないものかと、デルフィンヌは必死で考えました。 そこで思いついたのは・・・・ 「糸で縫っちゃえばいいんだわ！」 大当たりです。ギョウザは破けなくなりました。 さらにデルフィンヌはピンときて、ベットで寝ているソランジュを起こしました。 「ソランジュ、いいこと思いついたの！」 「なあにデルフィンヌ」 ねぼけまなこのソランジュをデルフィンヌは仕事部屋まで連れていきました。 そして、針と糸を渡します。 「わたしが切った生地をね、それで縫うの」 「縫う？」 「そう、縫うの。のりづけじゃなくて糸で縫っちゃうの」 チョキチョキチクチク。 チョキチョキチクチク。 それから二人は試作品となるカバンを一つ作りました。 のりづけでなく糸で縫いつけてあるので、大変丈夫な仕上がりになりました。 「これでツボを入れたって平気だわ」 次の週の蚤の市の日、二人のカバンはデザインのよさと耐久性が相まって、飛ぶように売れました。 チョキチョキチクチク。 チョキチョキチクチク。 二人は今日もカバンを作っています。 カバンから心が転げ落ちないように。 (おしまい) |
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