| 「無菌室のエスノグラフィー」番外編 |
| プロフェッサー・カレーライスの「講義！」 第３講：バカの帝国 R.ホーフスタッター『アメリカの反知性主義』 |
「学力低下」が語られています。たしかに私の娘をみていても、それを実感させられます。本当に計算ができない。６年生になるというのに、「２０÷４は、たぶん…５ぐらい」などと言っている。恐ろしい。不思議なのは、それでもクラスのなかではできない方ではなさそうだということ。「ゆとり教育」で「総合学習」が始まり完全週休２日制になってから、じっくりと学ぶ時間がとれなくなっているようです。これから一体どうなることやら。 それでもアメリカに比べれば、まだまともでしょう。アメリカで仕事をしていた鹿児島時代の同僚がこんな話をしていました。アメリカで大学の先生たちと飲みに行った。計量的なデータ分析が専門の社会学者たちとです。割勘で支払うことになりました。４人で６０ドル。一人当たりはいくらになるか。できないんですね。この計算が。見かねた彼が、「１５ドル」と答えを出すと、先生方いわく「ユー・アー・ジーニアス（お前は天才だ）」。 アメリカ人はとにかく数学（算数?）ができない。肥満者の数も半端ではない。太り過ぎで膝の骨が折れ、車椅子での生活を余儀なくされている人たちが大勢いるそうです。巨大ハンバーガーを貪り食い、テレビを呆けたように見つづけたためにアメリカ人はすっかりバカなデブになってしまった。国民は自らに見合った指導者を選ぶと言います。ジョージ・ブッシュ・ジュニアこそが、「バカの帝国」の大統領にもっとも相応しい人物なのでしょう。 バカでも大人しくしていれば人畜に害はありません。しかし、強大な軍事力と経済力とを背景に、アメリカは世界の各地で夜郎自大の蛮行を繰り返しています。イラク戦争はその象徴です。ところがアメリカ人の大多数はイラクがどこにあるのかも知らない。もちろん国際法の精神など誰も知らない。ただ自分たちのゼイタクな暮しが失われることだけを恐れて、ブッシュの戦争を支持したのです。 「力をもったバカ」ほど怖いものはありません。 知識を軽んじ、インテリを蔑む「反知性主義」こそがアメリカの伝統である。彼の国の大碩学リチャード・ホーフスタッターはそう断言しています。植民地時代、ニュー・イングランドの牧師たちは、旧世界に負けない高い知的レベルを誇っていました。しかし、西部開拓の進展とともに宗教の性格に変化が生じます。厳しい環境のなかで心の拠り所を求める開拓者たちは、信心深い人たちです。しかし、彼らは面倒な理屈を受けつけない。奇跡を演じて、人々の情念に訴えかけていく諸宗派が大きな力を獲得していった。ホーフスタッターのこの分析は納得のいくものです。堕胎を否定し、進化論を学校で教えることを拒むキリスト教原理主義集団が、ブッシュ政権の有力な支持基盤になっているのですから。 厳しい自然のなかで、アメリカ原住民や他の入植者との荒々しい抗争に明け暮れていた開拓地では、抽象的な知識など何の役にも立ちません。アメリカ人にとって知識とは社会適応のための道具なのです。学校教育もお手軽な実用主義に支配され、教師の社会的地位は驚くほど低い。過剰に勉学が重んじられ、教師が尊敬されている日本とは別世界ですね。 タフネスが至上のものとされるアメリカでは、前頭葉が肥大した「エッグヘッド」のインテリは、最低の人種として軽蔑されています。だからT・ルーズベルトのような卓越した知識人であっても、ボクシングチャンピオンであることを売り物に大統領選挙を戦わなければならなかったのです。マッチョ崇拝が根を張るアメリカでは、力を誇示する野蛮な政策が俗受けします。テキサス州知事時代毎週のように死刑執行の判を押し、「ミスターデス」の異名を取った「戦争中毒」の大統領こそがアメリカの政治的伝統の体現者なのです。 バカどもが起こした戦争の巻きぞいを食らうことだけは、ごめん被りたい。 「日出ずる賢（かしこ）の国」の民は、「バカの帝国」に絶縁状をつきつける勇気をもちたいものですね。 |
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